ひたすら無に向かって

ライダーハウスを解体し始めて1か月以上が経過した。その間、大きく気持ちが変化したことをここで書き留めておきたい。

はじめは「すべてぶっ壊して更地にしてしまおう」という気持ちだった。それから土地を買い、建物を作り、旅館業の登録をする。長い時間と資金が必要だ。ちまちまやっていこうと思った。

解体していくうちにいろんな人がやってきて「民泊登録してみよう」と考えるようになった。今ある建物を活かし、お金もかからない。今年からでも再開できるプランだ。

そうなると問題はコロナだ。うがい手洗いソーシャルディスタンスを徹底する宿としてライスセンターへのあっせんを進めるようになるだろうけど、相互監視状態の今、そんな言い訳は通用しない気がする。どうせ美瑛町には国外への移動が緩和されたら中国から人がいっぱいやってくるのに、ライダーハウスに対しての風当たりは強い気がする。

それも杞憂だった。おとなりさんは「やりなさい」と言ってくれた。1人味方がいれば十分である。気持ちが前向きになり、解体作業も進んだ。小屋を2個壊し、内部のゴミをすべて掻き出していたら兄がやってきた。いろいろ話していたら「売り家がある」ということを教えてもらい、次の日に内覧し、100万の値引きを吹っ掛けたら通った。たった2日で家を買うことが決定した。

住む家があれば生活が安定する。彼女がやってきてハロワから紙をもらってきた。美瑛町の就職である。ボーナスの計算をしながらウヒョホウ!としていると大家さんから電話があった。どうやら、今年中に土地を手放したいようだ。10年計画だった自分とはえらい違いである。まあ、年齢とかもあるだろう。自分だって実家に母が一人暮らしをしているけど、その土地や家屋にこだわりは無い。大家さんも古い家が空き家になるようで、その買い手を探しているようだ。

こちらとしても家があるし、場所にこだわりを持つことは無い。別にどこかでささやかにやればいいのだ。それに迷惑をおかけしたくはない。いつでも撤去する心づもりであるとくりかえしお伝えした。これは先代からの約束なのだ。

すべてを無にする方向で、その途中で民泊が出来ればいいなと思った。ライダーハウスも無が一番だ。勝ち負けが無く、ルールもマナーも無い。社会的責任もノルマも無い。勝手にやってくれ、管理人の仕事はたまにやってくるアレをとりのぞくぐらいだ。

自分の仕事。ライダーハウスは無収益化に向かっていくだろう。ライターは自分が書けることを広げていかないといけないが、それは人生計画だ。ライターとしてのスキルを身につけるってのは虚構にすぎなくて、結局自分が何者か?というのを問われている。んじゃなきゃ言葉は嘘になる。嘘は好きだけど、嫌いな嘘もある。嫌いな嘘をつきたくないから、好きな仕事だけをやらせてもらおう。裁判傍聴もその一つだ。さて、そうなると俺は何をして生きていこう?ライターとライスセンターの2本立て?彼女の収入をアテにしながら?そんな未来を想像すると背筋が凍った。just a ヒモじゃないか。年収マウントや首輪自慢に興味はないが、ヤツにだけは負けたくない。そうなると就職したい。だけど40越えなので正社員は難しいし、副業もやりにくいだろう。そうなると、どうする?いろんな仕事を頭で考えるが、ああ、と郵便局のことを思い出した。郵便配達アルバイトには副業で飲食店をやっている人が結構いる。楽な仕事じゃないけど、コツを掴めばルーチンワーク。何よりバイクに乗れるし、健康にもいい仕事だ。週5で働きながら、好きな嘘をついて生きていきたい。気に入ったヤツをカヤックや裁判傍聴に連れて行きたい。表ではまともな顔をしながら、心の底では大笑いしたいのだ。幸せとは、他人と分かち合った時にだけ実感できる感覚だ。(クリス・マッカンドレス「荒野へ」より)

そんなことを考えながら解体は進んだ。まちがいなく、無に向かっている。それが身軽で気持ちいい。

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